上手く出来た話

~平成の最後に寿退社し、 令和の初日に結婚した私のお話~

かませ犬

 20代半ばから後半にかけて、自分の中で「かませ犬」という言葉が流行った。
実に滑稽な言葉だ。
 それは、大分1モテルMと一緒にいた事が大きく関係している。27歳の時に一緒に大分から東京に戻ってきて、別の部署で働いていたが良く遊んでいた。
とある日、高校の同級生の落語家の落語会にMとKさんと行った。落語が終わった後、挨拶に行くと、その同級生はもちろん、Mを見た瞬間テンションが上がった。そして、すぐ私に、ご飯に行こうと連絡が来たので、セッティングをした。ここで予め言っておくと、Mは大分時代夜な夜な電話で話していた大学の同級生との遠距離を実らせ東京に戻ってきたタイミングで結婚していた。
 ご飯の日、場所は渋谷の桜の見えるお洒落なカレー屋さんだった。さすが落語家さんだけあって話が上手い!そしてカレーも美味い!なので、必然的に会は大盛り上がりした。
そして、夜も遅くなりお会計へと移ったタイミングで、落語家が、勝負に出た!いやまずは、かまをかけた!
「はい!この中で結婚してる人とかいたりして!?いる??」
するとMが
「はーい!」
と。
その瞬間、落語家が、机にバタンッ!!とわかりやすく倒れた。

“俺のここまでの頑張りは、、、”

という気持ちがバタンッの姿に現れていた。
私は、爆笑してしまったが、ここで黙っていられないのはKさんである

「ちょっと待ってください!私結婚してませんけど!」

「わかった!わかった!」

私が宥める。
落語家も気を取り直し、

「そうですか。よい情報です。」

と。

会自体は大変盛り上がったが、その後、このメンバーでまた食事に行くことはなかった。

この時ほど、“かませ犬”という言葉を噛みしめて笑ったことはなかった。

でも今はみんな幸せに暮らしているから良しとしよう!