上手く出来た話

~平成の最後に寿退社し、 令和の初日に結婚した私のお話~

母の還暦

 母の還暦の誕生日を前に、たまたま兄と2人きりになる機会があった。兄が32歳。私が30歳の時だ。

カウ:「ママ今年、還暦だよ。」
兄:「うん。」
カウ:「うちら、このまま行くと二人とも結婚できないし、ってことは、孫も見せてあげれないって事だよ。ママに何も恩返しが出来ずに終わっちゃう。」
兄:「えっ?何言ってるの?結婚もするだろうし、子供も産むだろうから、孫は見せてあげられるよ。」
カウ:「どっから来るのその自信」

兄は、32歳でお腹がぽっちゃりしてきて、頭も少し薄くなってきていた。しかし、笑いながら、自身たっぷりに話している。彼女もいないのに。幸せな人だなぁ。とつくづく思った。

カウ:「じゃー、カウは散々、海外旅行に行かせてもらったから、海外旅行プレゼントは?ベルギーオランダ!」
兄:「おッ!チョーいい!俺、貯金何にもないから、そういう目標があったら貯められる気がする!」
カウ:「えっ?お兄ちゃま、貯金ないの?」
兄:「全部使っちゃうんだよね!」

兄のお給料が、そこそこ良い事を私は知っている。それなのに貯金がないなんて。これは、もう絶対結婚できない。

兄:「ありがとう!じゃー貯めておくね!」


なんて、おめでたい人だろう。その後、お誕生日の時にはちゃんと、約束した金額を溜めて渡してくれた。

そして、その2年後。
兄は、8個年下の、物凄く可愛い女の子と結婚した。
その翌年には、女の子が生まれた。
そして、今お嫁さんのお腹の中には新しい命が宿っている。

なんて、凄い人なんだろう。

兄を見てると、楽しく、幸せな気分になる。
私は、兄の言葉から、実際に起こる夢のような現実を間近に見ていて、「あっ、私も、結婚もできるし、孫の顔も見せてあげられる!」と思った。

いつもありがとう。