上手く出来た話

~平成の最後に寿退社し、 令和の初日に結婚した私のお話~

結婚指輪

 夫グレイスと付き合って1ヵ月。丁度クリスマスを1週間後に控えた日曜日、お互いのプレゼントを買うために新宿に行った。
 正直、欲しいものは自分で買えるし、20代の時のように欲しいもので溢れているわけでもないので、困ってしまった。
 伊勢丹を見て、伊勢丹メンズ館を見て、バーニーズを見て~、また伊勢丹戻って、メンズ館でド派手なパンツを買って、次は私のプレゼントを選ぶ番になった。“どーしよう。欲しいものが全くない。”歩いて、歩いて、1Fの入り口に着いた。そこにはティファニーが。
 ショーケースを覗き込み、
「あっ、これ可愛い」
と指輪を指さした。すると
「本当だね!じゃーこの結婚指輪にする?」
と。
お互いに試着してみた。
しっくりくる。且つ、可愛い。
店員さんも、一番の繁忙期なのに丁寧に接客してくれる。
「このダイヤが入っているところが可愛いですよね~。男性は太めの方が存在感あって良いかと思いますよ~。」
素敵な接客と、素敵な指輪に、
「あ、ではこれで!」
と言ってしまいそうになった。
「ちょっと待って!本当に買うの?結婚指輪だよ?」
「だって、あれ良かったし、似合ってたよ。」
“うん?結婚しようねー。的な会話はしていたが、ここで買うといよいよ引き返せなくなるぞ!付き合ってまだ1ヵ月だぞ!大丈夫か?”
「よし、お茶して一度冷静になってゆっくり考えよう。」
少し歩いてタリーズに入った。
やはり、高揚と興奮から喉がカラカラ且つ、体の火照りを冷ましたく真冬にフラペチーノを飲んだ。
「どーしよっか?」
「どーしよっか?」
「もうここまで来たんだから買おう!」
一度頭を冷やし、結局何かを話し合ったわけでもなく、どちらにしても結婚するなら今日買おう!という結論で、全く想定していなかった結婚指輪を購入してしまった。
伊勢丹に戻り、先ほどの定員さんに
「買います!」
と伝え、手続きに入った。
「結婚指輪なので、一生ものですし、何か文字刻印しますか?」
「あー、はい。」
結婚指輪を買うなんて想定していなかったから、二人とも目の前の展開に戸惑っている。
「なんて、入れますか?結婚記念日や、思い出の日や、出会った日、二人のイニシャルなど入れる方多いですよ!」
「はー。。。では、結婚記念日も入籍日も決まってないもなぁ。出会った日にしようか?“2019.9.17”」
“ピッタリ3か月前。。。展開早ッ!でも決まる時は、決まる。こういう事か。”
「あとイニシャルですかね?」
「えーと、MとKか。」
「だから、M、K、」
と言った後、二人そろって、
「ファイブ?」
と言ってしまった。
“MK5”正に世代だ!
二人で大爆笑してしまった。
私が、
「出会った日程の次にMK5と入れてください」
「MK 5 ですか?なんですか?」
「えっ!?ご存知ないですか?広末涼子の名曲“マジで恋する5秒前”ですよ!」
「へーそうなんですねー。」
店員さんはピンときていなかったが、私たちは爆笑のまま。
しかし、グレイスが
「本当に5も入れるの?」
と心配してきた。
「入れるよ!だって二人揃って言ったんだし、面白いじゃん!」
「えー、ふざけてない?」
「ふざけてないよ!入れよう!」
私の意見が通り入れることになった。
指輪には、

“2019.9.17 ♡ M K 5”

こう刻まれた。

この刻印は見るたびに、購入した時の事を思い出して、その都度“クスッ”としてしまうだろう。
例えば、もし今後、喧嘩をしたり、もう嫌だと思ったときは、指輪の内側を見るようにしよう。

そう、そこには、
“M K 5” = “マジで 恋する 5秒前” ⇒ “マジで 恋する 50年”
が刻まれているのだから。
最低50年は“クスッ”としながら一緒にいようと思う!